MAPPA制作のオリジナルアニメ「全修。」の第2話のレビューです。
第2話のストーリーまとめ(ネタバレ)
ナツ子「『滅びゆく物語』はね、9つの国があって、それぞれの国には太陽のように輝くソウルフューチャーがあったの。みんなソウルフューチャーのおかげで毎日楽しく暮らすことができたんだけど…突然ヴォイドがやって来てソウルフューチャーを食べちゃったの!でね、9つのソウルフューチャーを全部ヴォイドに食べられちゃうと、世界を終わりにする超空洞ヴォイドが誕生しちゃうんだよ!ヤバいよね…ヘヘ
そう、だから超空洞ヴォイドが生まれないために最強の戦士を集めたの。
9人の戦士!ナインソルジャー!」
第2話の冒頭は、ナツ子が小学生時代に友達へ映画『滅びゆく物語』を楽しそうに語るシーンから始まります。「9つの国とソウルフューチャー」「それを食べ尽くすヴォイド」「世界を救うナインソルジャー」と、身振り手振りを交えながら熱弁するナツ子。その表情は純粋に楽しそうで、映画への愛があふれています。しかし、これは夢であり、ナツ子が現実に戻ったと思ったらそこは異世界。どうやら前回の召喚魔法の反動で、3日間も眠り続けていたことが判明します。
目覚めたナツ子は、猛烈な空腹でルークが作った料理に夢中に。「設定資料集にこんな情報なかった!」と語る彼女に、ルークは「資料集とは何だ?」と怪訝な表情。異世界の住人たちには、ナツ子の話が全く理解できず、ますます“変な奴”扱いされてしまいます。
そんな中、ナツ子の「空からヴォイドが来る」という予言が現実のものとなり、町は壊滅の危機に。ルークたちナインソルジャーが応戦するものの、ヴォイドの大群を相手に大苦戦。追い詰められたナツ子は再び魔法のタップを使おうとするものの、「同じものは描けない」という制約に阻まれます。それでも、アニメーターとしての創造力をフル回転させ、新たな空中戦の作画を召喚。見事、ヴォイドを撃退し、街を守ることに成功します。
戦いが終わると再び倒れ込むナツ子ですが、異世界での生活に少しずつ馴染み始めている様子も。とはいえ、彼女の頭には「どうやって現実に戻るのか?」という疑問が常に浮かんでおり、彼女の異世界での日々がどのように展開していくのか、今後の展開がが気になるところです。
感想
1.オマージュ祭りについて
前回の巨神兵に続き、今回は「板野サーカス」のオマージュ(?)で話題になってますね!正直、私も板野サーカスのことを詳しくは知らなかったのですが、調べてみるとアニメ史に残る超有名な演出技法とのこと。(しかしこれを即席で描けるナツ子はやはり天才ですわ……)
さらに驚いたのが、エンドクレジットに「板野サーカスパート 絵コンテ・3DCG監修 板野一郎」と、まさかの本人が関わっていたこと。これ、もはやオマージュというより公式公認のセルフカバー?という感じで、ある意味ズルいw
こういったオマージュ展開は今後も続くのか、そしてどこまで上手に活かせるのかが評価の分かれ目になりそうです。いわゆるアニメヲタクや業界人など、刺さる人には刺さるけど、元ネタを知らない人にはピンとこないので、視聴者の知識に依存するところがどう転がるかという感じですね。今のところ昭和~平成初期のアニメネタなので(恐らく制作者陣の世代なんだろうなぁ……)、「80年代や90年代のアニメオタクには刺さるけど、若い世代にはわかるのだろうか……というところは気になったりします。
とはいえ、別に知らなくても楽しめるので問題ないとは思いますが!むしろ、「アニメの技術史を追体験する」という新感覚の楽しさがあるのは、この作品ならではの魅力かも。まぁ、要は賛否両論ってことですね!
2.物語改変のパターン化に不安
第2話の構成としては前回と同じく「ピンチに陥って物語を改変する」というものでした。前回でも触れましたが、この「ピンチ→物語改変」という軸そのものは面白いのですが、やはり「このパターンがワンクールずっと続くとどうなんだろう?」という不安が頭をよぎります。同じ展開の繰り返しは、どうしても視聴者に飽きられてしまうリスクがありますからね。
まぁ「ワンクールアニメで変化を加えるのは第3話」という定石もあるので、次話から変化が出てくるとは思うでここは様子見でしょう。ここから良い意味で構成を崩していくのに期待ですね。
これも前回も書いた内容とやや被りますが、「ナツ子が異世界で奮闘している間、現実世界では何が起きているのか」といったサイドストーリーや、ナツ子が異世界と現実を行き来するような展開が描かれれば、もっと面白くなりそうなものです。
まだまだ序盤なので、こうした展開が練られていることを信じて、ひとまず様子見というところでしょうか。次回の構成の変化に期待です!
考察
1. 「同じものは描けない」というタップの制約
ナツ子の召喚魔法に課された「同じものは描けない」というルール、これは重要なポイントとなりそうです。この制約、簡単に言うと「クリエイターなら新しいものを作り続けなさいよ」という、アニメーターとしての意地を試されているような仕組みに思います。前回大活躍した巨神兵をまた呼び出せれば楽勝なのに、それが許されないというのがミソ。これによって、ナツ子が過去の成功体験に甘えることなく、毎回頭をひねって新しいものを作らざるを得ない状況に追い込まれるわけです。
ただ、この「同じもの禁止」という縛り、実は物語のテンポを生み出す燃料でもありますよね。毎回新作を求められるからこそ、「次は何を描くんだ?」という期待感が生まれるし、ナツ子のアイデア力や成長を見守る楽しさも倍増します。これ、観てる側も「アニメーターってこんなに大変なんだな」と頭が下がる一方で、「え、次どうするの?」とハラハラするポイントになる絶妙な仕掛けです。
2. ナツ子の召喚魔法の発動条件
ナツ子「さぁ来い!何でも描いてあげる!」
ナツ子の召喚魔法が「タップがしゃべるときにしか発動しない」という仕組み、これが意外と深いです。タップが「描け…描くんだ…」と語りかけるシーンは、一見すると魔法道具っぽい演出ですが、実はナツ子自身の心理状態や創作意欲を反映しているんじゃないかと思わせます。「心から何とかしたい」と思わなければ発動しないという条件は、ただのゲーム的な設定ではなく、彼女自身のクリエイターとしての覚悟が問われていると思います。
また、これは「アニメーターという職業そのものへのオマージュ」でもあります。創作には情熱や決意が不可欠で、タップがしゃべらないのは「ナツ子、お前の覚悟はその程度なのか?」と突きつけているようにも見えます。そして、この「タップとの対話」が物語終盤でどう決着するのかが非常に楽しみな部分ですね!召喚魔法が彼女の感情とリンクしている以上、ナツ子の成長や心の変化がそのまま物語を動かしていくという構造になっているのが面白いですよね。
3. 現実世界との接点
ナツ子「社長だ!」
社長「食べてちょんまげ~」
異世界に放り込まれたナツ子ですが、彼女が必死に現実との接点を探そうとしている姿がなんとも切実です。そして、異世界のモブキャラ「ナオミ」が、現実での知り合い(社長)にそっくりという小ネタが、これまた意味深。これはただの偶然なのか、それとも現実と異世界をつなぐ伏線なのか。
「現実に戻りたい!」と叫ぶナツ子の姿は一見コメディタッチですが、裏には「自分の居場所を見つけたい」という彼女の葛藤が透けて見えます。現実と異世界をつなぐカギが「ナオミ」なのか、それとも彼女自身の内面にあるのか、この先の展開でどう明かされるのかが非常に気になるところ。そして、もしかしたら異世界での経験が現実世界での創作活動にフィードバックされるような展開も期待できそうです。
4.今後の展開について
ナツ子「現実……戻りたい?」
ナツ子が最終的に現実世界へ戻るのか、それとも異世界で生きる道を選ぶのか――この物語の大きなテーマとなるであろう部分ですが、第2話では「ナツ子が現実に戻ることを意識している」という描写が特に強調されていました。このことから考えて、現実に戻る展開は十分にありそうですし、それが物語のゴールのひとつとして設定されている可能性が高いですね。
特に、ナツ子の「現実世界への未練」や「クリエイターとしての挫折感」が物語全体に根付いている以上、異世界での経験が彼女のスランプ克服や創作意欲の回復と密接に絡むのは間違いないでしょう。「現実……戻りたい?」と自問していたシーンも印象的で、「現実に戻って新作を描きたい」という気持ちを取り戻すことが、現実世界へ戻るための条件になるというのは、かなり説得力のある展開になりそうです。
おわりに
以上、第2話の感想&考察でした。今回は少しワンパターン感がありましたが、次週は必ず展開が動いてくると思うので、第3話を楽しみに待ちましょう!