MAPPA制作のオリジナルアニメ「全修。」の第8話のストーリーまとめ&レビューです。
第8話のストーリーまとめ(ネタバレ)
ナツ子は「滅びゆく物語」の世界が平和で穏やかになったことに、どこか違和感を抱きつつも、「まぁ、いっか」と流していた。しかし、そこに鳥監督が現れ、「いいわけねえだろ」とバッサリ否定する。以降、何をしていてもどこに行っても、鳥監督は「無駄だよ」を連発し、ナツ子の精神をじわじわと削り取っていく。ストーカーばりのしつこさにナツ子はキレ気味。
そんな中、QJが「鳥監督もナツ子と同じく“現実の国”から来たのでは?」と推測。さらに、鳥監督がよく現れる場所のひとつがデステニーの近くだという事実が発覚する。
デステニーの怪力によって捕獲された鳥監督を問い詰めると、彼の正体は「滅びゆく物語」の監督・鶴山亀太郎その人だった!ナツ子は憧れの監督と知り、オタク丸出しで大興奮。握手を求め、サインをおねだりし、尊敬の念を惜しみなくぶつける。しかし、鳥監督は「お前がこの映画を修正しようとしても無駄だ」と言い放ち、ナツ子の改変に強く反発する。
鳥監督が持ち出したタップは、彼が生前に使っていたものだった。ナツ子は喜ぶも、監督はそれを破壊しようとする。さらに「物語のエンディングは決まっている」「ルークの終わりはもう始まっている」と意味深な言葉を残し、去ってしまう。ナツ子は、「エンディングは変えられないのか?」と疑問を抱くが、まだ実感は湧かないままだった。
一方、ルークはユニオと酒場で「友達の友達」の恋愛相談をする。しかし、あまりに直球な相談内容にユニオも察し、酒場の店主ナオミから「まだ気持ちを伝えていないなら、いきなり結婚しようは気持ち悪いだけ」とバッサリ指摘される。ルークは考え込み、「まずはデートに誘え」とジャスティスにアドバイスされ、ナツ子を温泉に誘う。
温泉ではナツ子のナインソルジャーオタクっぷりが炸裂し、ルークと楽しげに会話するが、突如ヴォイドが近くを通る。ルークはヴォイドが街に到着する前に阻止しようと戦いに挑むが、ヴォイドの攻撃が予想以上に強力で、ナツ子も巻き込まれそうになる。ナツ子は、ガ○ダム的な巨大ロボ「移動戦士・イクダス」を召喚!しかし、ヴォイドのビーム攻撃に対してイクダスの右腕が吹き飛ばされる。
追い詰められる中、ルークはナツ子と共にイクダスの上に乗り、ヴォイドとの直接対決に挑む。ルークの勇敢な姿を見つめるナツ子は、今までにない感情を抱き始める。そして、ルークは渾身の一撃を繰り出し、ヴォイドを撃破。爆風に巻き込まれながらも、ナツ子の中にはっきりと「トゥンク…」という感情が芽生えるのだった。
感想&考察
1.全体感想
かなりの急展開で、一気に物語が動いた回でしたね!鳥の正体については、前回まではほとんど情報が出なかったですが、今回ついにその正体が「滅びゆく物語」の監督・鶴山亀太郎であることが明かされました。
まぁ正体については予想通りだったものの、思っていたよりもコミカルな登場の仕方に意表を突かれましたw サインを普通にしてくれたり、「無駄だよ」を連発するわりには実力行使はせず、どこか憎めないキャラになっているのが面白かったですね。
また、ルークの告白からナツ子の「トゥンク」まで、いきなりラブコメ展開に突入したのも意表を突かれた点。(ナツ子、ルークどちらもかわいすぎました)
これまで一切恋愛感情を持っていなかったナツ子が、ルークの突然の告白を受けて初めて「意識する」ようになったのは、大きなターニングポイントだったように思います。温泉のシーンは幻想的な雰囲気と音楽も相まって、本当にロマンチックでした。
ナツ子が初恋を知ったことで、「初恋ファーストラブ」の脚本が書けないスランプを抜けるきっかけになりそうな展開も見えてきました。物語がクライマックスに向かって大きく前進した回だったと言えますね。
2.今回判明した情報
■ 現実世界への復活ルートはほぼ確定的?
鶴山監督の「私は死んで翼を得た」「お前は何も得ていない」「とっとと現実に戻れ」というセリフから、ナツ子は死んでおらず、現実への復活ルートはほぼ確定的になりましたね。
■ タップは元々監督のものだった
ナツ子が持っているタップが元々鶴山監督が使っていたものだったことが明らかに。
なぜナツ子がそれを持っていたのかはまだ不明ですが、このタップがあることで「物語の修正」ができるようになっていたようです。
■ ナツ子がいたアニメスタジオは、鶴山監督が以前所属していた場所だった
ナツ子は監督に憧れてスタジオコンコンに入ったと話していました。時期的に直接の関わりはなかったかもしれませんが、監督もナツ子のことをよく知っていたのかもしれないですね。
3.鶴山監督について
監督はナツ子による修正を快く思っていないものの、それは単に「自分の作品を改変されたくない」という理由ではなさそうです。監督が怒っていたのは、物語の尺を伸ばしたり、泣く泣くカットしたシーンをナツ子が好き勝手に増やそうとしていることに対してでした。単なる創作者のエゴではなく、映画作りの苦労を知る者としての苛立ちのようにも感じられました。そこまで悪い人(鳥)ではなさそうにすら見えました。(「さん」無しとはいえ、ちゃんとナツ子にサインしてあげていたし)
また、「お前が来てから映画の総尺が伸びてしょうがない」という発言から、監督がナツ子よりも前にこの世界にいたことがわかりました。それなのに今までナツ子に何も干渉してこなかったのは、おそらく「その力がなかった」からだと思います。
監督は「タップの力で修正」と言っていたため、タップがなければ物語の修正ができないのだと思います。そして、ナツ子からタップを奪うチャンスがあったのに壊そうとしたり、そのまま逃げたりしたところを見ると、仮に監督自身がタップを取り返したところで修正する能力はなさそうに見えます。
結論、本作における「本当の黒幕」は鶴山監督ではない気がします。「無駄だよ」というセリフも、「お前が修正しても私が戻すから無駄だ!」という意味ではなく、「何をしても結末は変わらないから無駄だ」というニュアンスに聞こえます。つまり、監督自身が何かをするわけではなく、物語そのものが「決められた流れ」に従っている、という印象ですね。
4.今後の展開について
「どうあがいても物語のエンディングは既に決まっている。ルークの終わりはもう始まっているんだ」という鳥監督の言葉が非常に不穏でした。これは、ナツ子が介入しても結局バッドエンドに向かうことを示唆していますよね。
「ルークの終わり」とは何なのか?これまでの回想では、ルークが直接死ぬ描写はなく、仲間たちの死を目の当たりにして悲しんでいるシーンばかりですし、滅びゆく物語の最後については意図的に隠されています。あえて「この世界の終わり」ではなく「ルークの終わり」という言葉を使っているのは、何か裏に意味が隠されてる気がしてなりません。
例えば、「ルークだけが生き残り、絶望の果てに自死する」とか「ルークが闇落ちして逆に世界を壊す側に回る」といった「ルークの内面の終わり」だとしたら、恋人関係になったナツ子であれば、ルークを救うことができる可能性は十分にあります。
今回の話で、ナツ子は初めて「トゥンク」を経験し、恋を知りました。もしナツ子がルークを救い、絶望から救い出すことができたなら、物語の結末は変わるかもしれません。そして、その経験を「初恋ファーストラブ」に反映させ、現実世界で映画を完成させる……そんな展開になれば、綺麗な着地になるのではないかと感じます。