MAPPA制作のオリジナルアニメ「全修。」の第3話のレビューです。
第3話のストーリーまとめ(ネタバレ)
第3話の舞台は街の収穫祭。住民たちは歌や踊りで盛り上がり、平和そのものの空気が広がります。ナツ子も「次にヴォイドが来るのは雨の日」という映画の知識を頼りに、降水確率ゼロのこの日は安全だと楽観的に構え、お祭り気分に浸ります。久しぶりの息抜きに、「締め切りも追われることがないって最高!」と楽しむナツ子。
一方で、町長の娘「デステニー」が登場。彼女は婚約者である理事長に不満を抱えながらも自分の夢に踏み出せずにいましたが、ナツ子との交流を通じてその背中を押されます。
そんな祭りの最中、突如「ヴォイドが司祭に擬態して侵入する」という事態が発生。本来、この展開は映画の筋書きではもっと後の出来事だったそうですが、予想外の早いタイミングでの出来事にナツ子は独特な謎の動きを真似させることで本物と偽物を見極める機転を見せます。
ヴォイドの正体が露見したことで、街は一気に緊急事態へ。ルークはお酒の影響で使い物にならず、敵の圧倒的な力に押されてしまいます。この危機に、ナツ子は再び魔法のタップを使用。全く新しいキャラクター「サーバルキャットマスク」を召喚し、プロレス技を駆使してヴォイドを撃退。ド派手な戦闘で街を守り抜きましたが、その代償としてまたしても反動で3日間寝込むことに。
戦いの後、デステニーが婚約を断り、自ら孤児院を設立する決意を表明。映画の筋書きが変わりつつあることが再び示唆されます。
感想
1.タイガーマスクオマージュについて
タイガーマスクのオマージュがメインとなった今回のエピソード。孤児院やプロレス技でサーバルキャットマスクが大暴れするシーンは、元ネタを知っている人には刺さるものがあったのかも。特に、作画カロリー高そうなプロレス技の連発は見応えがあり、「この制作陣、本気だな」と感じる瞬間もありました。
ただ一方で、このオマージュはさすがにマニアックすぎるかもな…とは思いました。タイガーマスク自体が古い作品であるため、若い世代の視聴者にとっては「何これ?」となってしまうのも無理はないところ。前回も同じようなことを書きましたが、元ネタを知らないと笑いどころがわからず、置いてけぼり感が強くなりそうです。
3話まで見ていて、もう恐らくずっとこの作風でいくんだろうな…とは思いました。賛否両論。
2.デステニーの成長
今回の収穫祭で描かれたデステニーの孤児院設立を決意する姿が印象的でした。それまで周囲に守られる立場だったデステニーが、自らの意思で婚約を断り、新しい未来を切り開こうとする。その勇気ある決断に「やるじゃん!」と思わず応援したくなる瞬間でした。(ちょっと想像の斜め上だったけど…w)
3.原作と異なる恋愛模様の変化?
映画ではデステニーとルークが恋に落ちるはずが、ナツ子の介入で恋模様が変わっていきそうな展開に。「デステニーだけがルークを笑顔にできる」という設定を改変するのは、ナツ子自身にとっても複雑な心情が絡んでいるのではと感じました。
4.期待を超えて来ない感じのマンネリ感
「ナツ子がピンチに陥り、召喚魔法で解決する」という展開が毎回似ている問題。デステニーの登場やメメルンの不穏な雰囲気など、全く変化が無いというわけではないのですが、ちょっと現状は物足りなさが勝ってしまいますね。「作画カロリーが高い技を出して寝る」という繰り返しだとさすがにマンネリ感が強いです。(勝手に期待し過ぎなのかなぁ…)
考察
1.映画の筋書きからの逸脱が生む未知の展開
今回最も印象的だったのは、「ヴォイドが司祭に擬態する」という映画では後半に起きる展開が、予想より早く発生したことです。この「前倒し」は、明らかにナツ子が介入してきたことによる影響なので、今後どんどんナツ子の知らない物語に変化していきそうなのが楽しみですね。
2.メメルンは裏切っているのか?
メメルンの不穏な雰囲気や不信な行動が印象的でしたね。ヴォイドが来た時に彼女は完全に居なかったので、メメルンがヴォイドを引き寄せたのではないかという疑惑も浮かび上がります。ただ、さすがにあからさま過ぎるのでミスリードっぽいなとは思います。メメルンはこれまでのエピソードでも「優雅で冷静」「知識人」として描かれており、ナツ子やルークを助ける立場にいました。突然裏切るキャラクターとしての伏線は薄く、これまでの彼女の性格や行動とは整合性がありません。とはいえ、何かしら謎があるのは間違いないので、次回に期待なポイントですね。
3.ナツ子の「全修」能力とテーマの深掘り
ナツ子の「描いて戦う」という能力は、単なる戦闘手段ではなく、「物語を修正し、新たな可能性を生み出す」ことを暗示しています。タイトルの『全修。』にもあるように、ナツ子がこの異世界で“物語を完全に修正する”という展開が待っているのだと思います。ナツ子が何度も映画を見たことで“知っているはず”の設定や展開が、彼女の手で少しずつ変わっていく様子は、アニメの本質を問うようなメタ的テーマを孕んでいるように思えます。
4.今後の展開について
第3話で明らかになったのは、ナツ子の介入によって「原作通り」の未来が大きく崩れ始めているということです。本来後半に起きるはずだったヴォイドの司祭擬態が前倒しで発生し、さらにデステニーが孤児院設立を決意するなど、映画にはなかった新たな要素が次々と加わっています。このズレは、ナツ子が異世界に与えた影響の大きさを象徴しています。
ただし、これが良い方向へ進むのか、それとも原作以上の破滅を招くのかは不透明です。ナツ子が持つ「未来の知識」が次第に役に立たなくなりつつある今、彼女は未知の脅威に直面せざるを得なくなるでしょう。さらに、原作映画が悲劇で終わるという背景もあり、ナツ子がその運命を覆せるのかどうかが今後の鍵になりそうです。
おわりに
以上、第3話の感想&考察でした。メメルンがきになるので第4話を期待して待ちましょう!